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読み終わった。素晴らしく明晰で美しくて平易な文章で綴られた韓国文学読書案内。どの章も著者の真摯で端正な語りが清水のように意識に沁みてくる。
時間がない人には第7章の「朝鮮戦争は韓国文学の背骨である」だけでも読んでほしい。私はハルバースタムのノンフィクションで一通り知っているつもりでいたけれど、一進一退で占領者が入れ替わった悲惨さはわかっていなかった。WWⅡにおけるナチスとソ連の二重三重占領を受けた国々を彷彿させる恐ろしさ。そこに根差した分断文学。小津安二郎や黒澤明が拉致され不在になったところから出発する戦後日本映画史を想像してみてほしいという説明の声がずっしり重くのしかかってくる。日本が負っている戦争特需の恥も今ここにあるリアルとして感じられた。
章を読み進めるごとに読みたい本が雪だるま式に増える。昨年発表されたというハン・ガンの『別れは告げない』の邦訳が待ち遠しい。済州島四・三事件に挑んだ作品だそうです。既読作品の書評のなかでは『少年が来る』にアディーチェの『半分のぼった黄色い太陽』を並べて論じたくだりに特に興奮した。
結びの言葉にとても励まされた。なんて優しい言葉だろうと思った。
「いささか楽観的にすぎるかもしれないが、海外文学を読むという行為そのものがおそらく、悲観とは反対の方向を向いている。」

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