はい、これは何度も言及してるので聞き飽きたかもしれませんが、差別はどこまでも階層構造なので、「強い」側であるはずなのに実際には強くない人がいる場合、強いとされている集団からも見下され、弱いとされている側からの期待にも応えることができず、どちらからも相手にされない別の新たな集団が出現します。

その職場の若い男性のような人は、「男なんだから重いものを持って当然」という両サイドからの理不尽な期待に晒されているわけですが、全ての「男性」が力持ちであるわけはないし、全ての「女性」が力が弱いわけでもない、という当たり前の事が見過ごされてしまっているのだと思います。

同じことが経済力などにも言えて、「男が稼ぐのが当たり前」の世界では、「稼げない男」の価値はゼロになってしまいます。経済力以外にも様々な「男らしさ」に過大な価値を付与する家父長制が根強く残る社会では、「男らしくない」人間の価値は相対的に下がっていってしまいます。

それに加えて「結婚すること」や、「子孫を残すこと」ができてようやく「一人前」と言った規範も残っていますので、「稼ぐこともできず、結婚もできず、子供を残せない男」は、社会全体から「お前は男として、大人として、人間として無価値だ」と言われ続けているような気になるのも無理はないと思います。

さらに当人にとって「男」であることが、アイデンティティの重要な一部なのであれば、世間から「お前は男じゃない」と言われ続けているようなものです。「男のくせに」と言われる度に、「お前は男であるべきなのだ」という社会的要請に答えられない自分とのギャップを認識させられる度に、「お前は「一人前の男」ではない半端者なのだ」、という社会的評価を全方向から突きつけられたような気がして、自尊心を損ね続けることになります。

それに加えて、この資本主義社会において「モテない」ということは「自分には男としての価値も人間としての価値もない」という自己評価をさらに強化することに繋がってしまいがちです。

残酷な話だと思います。

家父長制は女性だけでなく、こういう人々も不幸にしますし、GSM差別にも繋がりやすいので、「女らしさ」を押し付けてはいけないのと同じように「男らしさ」も押し付けてはいけないし、構造的な問題の解決は社会全体の責任として考えないといけないのだと思います。

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