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『森鷗外、自分を探す』 

これまで「舞姫」に思い入れが強すぎて森鴎外本人について知ることを拒否する人生だったんだけど、岩波ジュニアでこのタイトルで、今なら、と思ったらまさに当たりだった。

『森鷗外、自分を探す』
iwanami.co.jp/book/b616728.htm

現国で舞姫を読んだ悩める受験生だったころ、わたしは引き裂かれる豊太郎ぬしにやたら共鳴してしまった。周りの女子はみんな豊太郎が嫌いだったけど、わたしはその不信感を著者本人に向けたんだろう。こんな物語を書く一方で、出世の道を上り詰めたことに、打算や迎合の匂いを感じ取りたくなかった。思春期の潔癖さで。
いまさらながら、エリーゼを思わせる「扣鈕(ぼたん)」に胸が熱くなったり、青空文庫で「鼠坂」を読んで、ああ、と思ったりしている。
わたしのなかにいる「高校生のわたし」が読んだような感覚がある。ほかのどんな本でもこうすんなりとは受け止められなかっただろうな。あらためて、岩波ジュニア文庫のスタンスは好きだなあと思う。中高生にやさしく寄り添ってくれる。

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