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『翻訳をジェンダーする』読み。翻訳学者が翻訳における「女ことば」を分析する本。自分は翻訳小説をよく読むにも拘らず、登場する女性達が過剰な「女らしさ」をセリフによって表現させられていることに数年前まで気づかずにいた。本文によると女の子には「わたし」・男の子には「ぼく」と何の説明もなく「性別に応じた一人称」が割り当てられるように、説明がないことは畢竟それが自然であるとして、説明されるよりもより読者に浸透してしまう。つまり小説において「女らしい」言葉を女性キャラに喋らせることは、一意的な「女らしさ」を女性は持っていて当たり前だと読者に刷り込むことにもなったと語る。それが明治からずっと続いてきたが、おかしいと思った作家や翻訳家によって女性達のことばから「女」の役割を示す語尾が除かれる傾向が生まれていること、またウーマン・リブ運動のことにも詳しく触れて社会の変化が翻訳にどう影響したかの実例も示す。
『ことばが変われば社会が変わる』と同じく、ことばと社会の相互関係に注目している。
ノンバイナリーの代名詞について触れてあったのも嬉しい。日本語で確定された代名詞はまだないけれど、かつて「彼・彼女」を生んだように翻訳から生み出せるのではないかと期待の話をしつつ、訳語「彼人」が出てこないのはちょっと意外だった。

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