当時において「女の幸せ」のために結婚することも、男社会に分け入って行くことも共に地獄と呼ぶ作品、その潔さが好きだよ。そして行きたい「地獄」への道が開けた寅が、橋上から川を見下ろすシーンで第1週を閉じつつ、同じ橋の上に同じ方向に顔を向ける様々な女性たちを立たせているのが素敵すぎたね…!
その女性たちも1話で花江さんに結婚がいいものとは思われないと話していた時に通りがかった人々の再登場で、見下ろすのは川下。ゆく川の流れは絶えずしてしかももとの水にはあらずってなもんで、そこから15年後にあたる1話冒頭、第14条から始まる川辺に寄せていた笹船は、彼女たちがたどり着いた将来だった。
寅と同じ方向を見る様々な人生を想起させる様々な恰好の女性達は作中における個人名がない。俳優の名前もクレジットされているか不明なレベルの「端役」に「主人公」と同じ場所・同じ行動を与える(OPで様々な女性達が同じダンスに参加しているように)のは、歴史に名前を奪われてきた/でも実在した人々の再現って感じでよかった