「皇帝と国王」
emperorは皇帝と訳されるが、歴史的にローマと中国を比較すると、大きなニュアンスの違いがある。
emperor(英)、empereur(仏)はラテン語のimperium(軍事指揮権)に由来する。この概念はローマ共和制から存在し、アウグストゥス以降、「プリンケプス 市民の第一人者」に専属。ただし、プリンケプスは元老院に選挙で指名されなけばならない。
この元老院による選挙・指名という形式は「専制君主制」とされたディオクレティアヌス以降、東ローマ帝国まで継承された。
また中世の神聖ローマ皇帝は常に選挙で選ばれる形式であり、選挙権を有する大貴族・高位聖職者は「選帝侯」とされる。
トマス・アクィナスによれば、皇帝の支配が「自然法」を逸脱した場合、人民に「抵抗権」が発生する。ただし、この抵抗の主体は選帝侯を代表とする大貴族ということになる。
従って、ビスマルクによって「復興」されたドイツ帝国皇帝Kaiserは帝国構成諸国家によって選出される建前。
これに対しラテン語rexに由来するフランス王RoiないしKingは世襲。ナポレオンがローマ帝国のイメージを演出、「普通選挙」によってフランス皇帝に選ばれた所以です。
逆に「抵抗権」は近代以降周縁化される。