エンゲル係数28%、42年振りの水準のとのこと。
ざっくり言えば、ここの所の物価高で庶民の生活水準は42年前に(1982年)に戻ったとも言える。
しかし、1982年は非正規雇用はまだ法的に認められておらず、まだ次世代は、さらに「豊か」になるだろう、と言う、根拠はないが漠然とした希望があった時代である。
言説の世界でポストモダニズムが一世を風靡するのもここから10年である。
実際には、英国ではサッチャー、米国ではレーガンが当選し、世界的に新自由主義が本格的に始動し始めた時期でもあるのだが、日本ではまだこれから「バブル」へと突入していくタイミングになる。
それにしても未だに「インフレ」をなにやら「希望の星」を闇雲に信じる人達がいるのは驚く。
かつてインフレがポジティヴに解釈されたのは、実体経済への新規の設備投資を経て、短いタイムラグで賃上げが起こる、というWWII以後の「例外」的な時代の話。
現在のように、物価は急上昇、実質賃金は減少では、「不労所得」の億万長者以外の生活水準は下がり続けるだけ。その上、雇用は不安定、老後も保障されないとなるとなおさらである。
これを学問的に言えば、WWII以後の「新古典派総合」の前提は完全に崩れた、と私は考えている。