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雑誌とは言説の世界での「運動」である。であるから、はっきりとした方向性と同時に「運動」としての「広がり」と追及しなければならない。

 これは言うは易し、行うは難し。前者だけになると、それは「同人雑誌」となり、運動にはならない。かといって、闇雲にポジションが違う人、論考を掲載していては、「時代との対決」の態度が雲散霧消し、単に「俗情との結託」に堕落する。

 戦後日本で、その意味で「運動」として最も成功した雑誌は、埴谷雄高、平野謙、荒正人等が敗戦後1945年中に創刊した『近代文学』だろう。

 戦後改革のほとんどは、憲法・労働法、民法、それに戦時協力者の公職追放などSCAPのイニシアティヴに拠る。逆に言うと、日本社会内部の民主主義勢力は、それだけに力は全く持たなかった。

 例外が「文学」の世界、とりわけ「近代文学」だった。ここに震源地として、野間宏、花田清輝、加藤周一、島尾敏雄、安倍公房、堀田善衛、そして椎名麟三などの「戦後文学」が叢生し、その後継者として大江健三郎が位置する。

 旧文学を代表する小林秀雄は「近代文学」第2号で「利口な奴はたんと反省するがいい。俺は馬鹿だから反省しない」という名台詞を吐いたことになっているが、これは座談会では話を適当に合わせておいて、後から「書き込んだ」のである。

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