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  安彦良和に『ジャンヌ』という作品がある。山岸涼子にも「レベーレーション」というジャンヌ・ダルクを扱った漫画があり、日本では「オルレアンの少女」はなかなかの人気である。これが敵国だった英国では、シェイクスピアをはじめさっぱり不人気なのは、やはり百年戦争の敵国同士だからだろう。

 ところで、安彦はすっかり「負け犬」モードだった仏の急転直下の勝利の要因として、長槍歩兵の密集隊形の登場をダイナミックに描いている。
 長槍歩兵の密集隊形(パイク)が15世紀に急速に前景化したのは事実だが、ほとんど降伏寸前だった仏があっという間にイングランドをドーバーの彼方に追い払ったのは、砲兵隊。この仏砲兵隊の出現によって、従来の防御要塞は一旦その機能を失う。百年戦争終結の1453年が同時にコンスタンチノープル陥落の年でもあるのは、象徴的である。

 火縄銃ないしマスケットは15世紀中には全欧州に普及したが、決定的な役割は果たさなかった。日本では1575年の長篠の戦が「火器の時代」への象徴とされるが、どうもこれは18世紀位につくられた伝説らしい(有名な屏風もその頃のもの)。
 
 欧州では機動性のある騎兵と防御に勝る槍兵及び砲兵の兵科連合が緩やかに18世紀まで続くのである。ただし中世後期的な重騎兵は姿を消すけれども。

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