東大法学部名誉教授木庭顕さんの「ポスト戦後日本の知的状況」を読む。
木庭さんはローマ法専攻、「稀代の碩学」と言われる、東大法学部伝説の「奥の院」的な人である。私は直接お会いしたことも講義を聞いたこともないけれども。
元来、「象牙の塔」的なスタイルだが、いよいよ現在の日本の政治社会状況及び知的退廃への危機感を押さえきれなくなったようだ。
私は専門も世代も違うし(木庭さんは1951年生)、立場も違うので、疑問点や同意できない部分もあるが、全体としては問題意識はよくわかる。研究者の人にはぜひ一読をお勧めしたい。
それにしても、この書における木庭さんは、怒りを爆発させた「荒野のリア王」さながらの猛々しさである。
序文からして「東大法学部は一般的には、必要な文学的歴史学的哲学的素養を欠き、したがってクリティックなど一顧だにしてこなかった」と一刀両断。
大学に関しても、大学院化以降「教授の仕事は申請書類を書くことに変わった」、「ロースクールによって法律学は初等法律教育に堕落」、政治学者は「政治学をやめて政治に走った」という調子である。
中沢新一に至っては「いい加減なことを言って読者をたぶらかそうとする暗い情念」。
ま、中沢は単に本人が「いい加減な人」なだけでは?という気もするが。