新産業創出協議会(Q-STAR)と内閣府は2024年2月5日に「Quantum Startup Day 2024~出会いの場~」を開催、そこで東芝社長の島田太郎氏は、次のようにイノベーション戦略を説明。
「大企業も、大学も、政府も、波動が互いに干渉しあうコヒーレント状態を作る必要がある。スタートアップ企業ともコヒーレントタイムを同期させることで、日本の失われた30年が、失われたわけではないということを示したい」
続いて島田氏は「ニュートン力学に基づけば、日本は現在最もエントロピーが低い状態」とし、それは「世界中で最も最適な状態」と続ける。
ここまでくれば、内閣府の「イノベーション」戦略とやらがもはやただの「駄法螺」なことは明晰にして判明である。
東芝ではじめて「デジタルがわかる」とされている社長がこの「有り様」であるから、日本の半導体産業が壊滅したのは、あながち米国の責にのみ帰せるものではなかろう。
ちなみにQuantumとは量子のこと。つまり量子論を応用したスタートアップ企業戦略(のはかない望み)をぶち上げている。
しかし「エントロピー」をニュートン力学の概念、と言っているようでは、19世紀の熱力学から復習する必要がある。
量子技術はだいぶ先の話になるだろう。
ところで、「半導体」とはそもそも量子論を応用したものに他ならない。現代デジタル社会は、その意味で量子論の応用によって成立しているとも言える。
このことは相対性理論とGPSの関係についても言えること。
しかし、ボーアやハイゼンベルク、シュレデンィンガー、アインシュタイン、ディラック達が理論的に地平を開いた時には、当然「半導体技術」への応用を予め考えていた訳ではない。
この過程には、基礎研究、応用、商品化が、決して予め直線的に繋がれるわけではないことが明確に表れている。
であるから、今の日本のように、大学の基礎研究への投資をないがしろにして、「すぐ金になる」スタートアップ企業やユニコーン企業などをコンサルと広告代理店がぶち上げながら、突き進む現在の政策では、「ナイアガラの滝」へと日本列島在住の1億2千万人が押し流されていくこと、これはまず間違いない。
ところで、この島田という東芝社長、量子コンピューターなど定義が曖昧なものを語る前に、「半導体」が量子論の応用、ということを社内の誰かに教えてもらう必要があるのではないか?