しかし、「うつ」を脳科学によって克服、と銘打っているが、現在のSSRIやSNRIにしてもセロトニンやノルアドレナリンそのものを増やせる訳ではない。「脳」への「再取り込み」をブロック(遅らせる)ことで、血中濃度を上げるだけである。
であるから、「うつDepression」の器質的原因=原理的にセロトニンやノルアドレナリンを減少させるを除去できるわけではない。
つまり「うつ」になる環境におかれていれば、いくらSSRIやSNRIを服用し続けても、根本治療にはならない。
勿論、重度の「鬱」には薬物療法が効果的なのは事実。実際、戦争中などはパイロットや若い特高兵士に覚醒剤を与えて出撃させていた。
戦時に蓄えられていた覚醒剤が戦後市場に横流しされたのが「ヒロポン」。坂口安吾など戦後派の作家が服用していたのでも有名である。
「疲労」が「ポン」ととれるので、「ヒロポン」と命名された。由来と知った時は少し拍子抜けしたけれども。
サルトルなども『弁証法的理性批判』に取り組む際、覚醒剤を嚙み砕きながら、あの膨大な書物を書き続けたと言う。
しかし、後期の主著としてはやはり『家の馬鹿息子』が決定的に重要。おそらく、近いうちにこの書物をベースにして19世紀言説史は書き換えられるだろう。