ドイツの哲学者ハーバーマスは「イスラエルとの連帯」を公開書簡にて表明。「ドイツ国内での反ユダヤ主義の高まり」を理由に「イスラエルにジェノサイドの意図があるとされてはならない」とするが、これは多いに首を傾げる。
ドイツ政府は確かに「ホロコースト」との関係上、国際社会での発言は制限されざるを得ない。それでもブランデンブルク門にこれみよがしにイスラエル国旗を掲げるなどは、私は「行き過ぎ」だと思うけれども。
ちなみにネタニヤフはメルケルとの会談で「ホロコーストもアラブの連中の仕業」と発言、メルケルは「いや、あれはドイツの責任」と返したことがある。
しかし、哲学者は、もう少し原則的かつ冷静な議論をすべきだろう。勿論、1929年生のハーバーマスはすでに自分で「思考」できなくなっている可能性はあるけれども。
現在のドイツではもはやユダヤ人よりもアラブ系・イラン系の移民の方がはるかに多い。ドイツの排外主義は、こうしたアラブ・イラン系の移民を対象としている。映画『女は二度決断する』でも、夫と子供をテロで殺害するのは、ドイツとギリシアを跨いだ「国際ナオナチ」である。
理論的にはアレントも含め、フランクフルト学派、やや西欧の植民地主義への批判が弱い。
これは同時代の仏のサルトルと対照的な点である。
WWII後のドイツへの移民に関して、少し補足します。
WWII直後、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、バルト三国、それにポーランド、チェコなどのドイツ系住民は悉くドイツに追放、難民となって流入。一方、戦前100万程いたユダヤ人はほぼ全滅。
ただし、これらの地域のドイツ系住民の多くは中世以来の「北の十字軍」及びハンザ同盟に象徴されるバルト海でのドイツ系商人の活躍以来の居住者です。ドストエフスキーの小説などでは「ドイツ人」が悪の象徴の記号となっている。
またWWII後の国境変更でプロイセンが消滅、ポーランド領となったことも先述しました。
ただし、西ドイツは60年代には高度経済成長に突入。仏と同じく低賃金労働力=「ガストアルバイター」として、トルコ系、韓国系の労働者を導入。韓国系は男は炭鉱、女性は看護師。
しかし「欲しかったのは労働力だが、来たのは人間だった」という問題に直面(日本は外国人を入れず農村からの人口移動に頼る)。
しかし白人人口の急減に直面したドイツは統一後、出生地主義の国籍法を変更。またシリア内戦から生まれた難民の一部を受け入れます(ただしほとんどはトルコの難民キャンプにいる)。
また技術系専門職にはイラン系も多い。ドイツ極右の排外主義はこれらの人々を標的にしています。