仏独のユダヤ系は主に西部・中央部アシュケナージ出身であり、南仏、イタリアのユダヤ系はセファラード出身である。
例えば、先日言及したA.モラヴィア、ナタリア・ギンズブルク、息子の歴史家のカルロ、などはセファラード系となる。イタリアでは港町リヴォルノに中世以来最大のユダヤ共同体があり、ナポレオンのイタリア征服とともに、全イタリアのユダヤ差別は撤廃。
マルクスの出身地であるトリ―アをはじめ、フランクフルト、ケルンなどのラインラントでもユダヤ人解放が「強制」され、これはウィーン体制下にも旧に復せず。
その後、イタリアの近代化とともにトリノにユダヤ系知識人が集中。
しかし、ドレフュス事件、ウィーンでの「反ユダヤ主義 Anti-semitisme」の高まりを受け、ユダヤ人も「国家」を持つべきだとするシオニズムが台頭。
とは言え、この時点ではその国家の場所はどこか、国家語は何語も未定。
仏独伊+ハプスブルクの同化ユダヤ系の圧倒的多数はシオニズムには関心を示さず。
結局WWIまでのシオニズムの支持者はロシア帝国内のアシュケナージ。
ベングリオンやペギンはアシュケナージとしてパレスティナに渡る。この時点では国家語はイッディシュの可能性大。そもそも多数のユダヤ人はヘブライ語を知らない。
しかし、堪らないのは欧州の反ユダヤ主義に何の責任もない、パレスティナのアラブ人です。
2000年前にここにヘブライ人国家が存在した、と言われても、アラブ人の方も、千数百年在住している。
そもそも、当のユダヤ人自身がヘブライ語などとっくの昔に忘れている。
宗教儀礼用にラビなど一部宗教指導者は古典ヘブライ語の知識はあるものの、実はディアスポラ・ユダヤ教共同体指導者たちは、国家設立に反対なのです。
であるから、ヘブライ人・ヘブライ語・ユダヤ国家の三位一体は、まさに「近代」に創造された、壮大なフィクション(原理的にはナショナリズム一般がそうなのですが)。
この状況を激変させたのが、WWIの英仏の三枚舌外交とWWIIにおけるホロコースト。
しかし、繰り返しますが、欧米の反ユダヤ主義とホロコーストにパレスティナのアラブ人は何の責任もない。
他方、注意する必要があるのは、日本では「シオンの賢者」やら「アウシュヴィッツはなかった」やら、「ユダヤ資本の国際的陰謀」やらという怪しい反ユダヤ主義言説も極右と結びついて存在していること。有名なマルコポーロ事件、編集責任者はあの「月刊HANADA」の花田紀凱。
であるから、シオニズム批判と「反ユダヤ主義」は明確に区別しなければならないのです。