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『ダントン』(監督A.ワイダ、1983)

 このワイダのダントン、3度目か4度目だと思う。リマスター版であるから、画質はかなりいい。

 また元来が戯曲であることもあり、演劇的な撮り方になっているが、それが決してマイナスになっていない。

 ダントンとロベスピエールの権力闘争の最後の数日間であるので、ダントン、ロベスピエール、デムーラン、サン・ジュストなど限られた人物を近い距離からとっても不自然ではない。

 活人画的な場面などは、P.ブルックの『マラー・サド』を思わせる場面もある。

 ワイダは88年の『悪霊』の後、冷戦終結後は急速に緊張感を失ってしまった。

 『ダントン』における各人物の描き方は基本ミシュレ以来の伝統的なもの。ただ、この映画、俳優の演技がパワフルである。ちょうど30年経った今、やはり映画界全体の衰退を感じる。

 特に英米の白人男性俳優の演技のレベルが劇的に下がった。これはもう「時代」の問題だろう。

 ところで、この映画を観た仏大統領ミッテランは非常に「不機嫌」だったとされるが、何故だろう?

 ミッテランは青年期極右団体「火の十字団」のメンバー、ペタン崇拝者。個人的にダントンは愚かロベスピエールに親近感をもっていた筈もない。

 ただ「ナショナリスト」故にということかも?

 「ダントン」、1983年だから、ちょうど「30年」ではなく、「40年」でした。

 いやはや、まさに「記憶」の遠近法の狂いです。

 それにしても40年とは・・・映画界も変わるわけです。

 フランス革命時を舞台にした映画としてはヌーヴェル・ヴァーグの一員E.ロメールの『グレースと公爵』(2001年)がある。
 ロメールはヌーヴェル・バーグの「兄」として長く活躍し、傑作も多く、全体としてはワイダよりいいとと思うが、この映画に関しては『ダントン』が上。状況設定の力にもよるが、緊迫感が全く違う。

 ロメール、好きな監督の一人だったが、晩年は次作の『三重スパイ』も今一つだった。

 あまりマクロな政治と関わる事件を撮るのが得意ではないのかもしれない。

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