WWII中のユーゴスラビアー坂口尚『石の花』とE.クストリツァ『アンダーグラウンド』(上)
1939-1945年、大陸ヨーロッパ全域をナチス・ドイツが制覇する状況下において、ユーゴスラビアでのパルチザン闘争を扱った漫画。複数の「言語」、「民族」、「宗教」が、複雑に交錯する中での「抵抗」、「暴力」、「憎しみ」、「平和」などの様相をかなり丁寧に描いている。
扱っている時代的にはE.クストリッツァの『アンダ―グラウンド』中盤までとほぼ重なっている。
作品化にあたり、作者と「偶然」小学校で同級生であった、駒場のバルカン現代史の柴宜弘さんが、ユーゴの複雑な歴史に関して、かなり全面的に協力した、とのこと。
作者坂口尚は1946年生なので、1947年生の安彦良和とは、虫プロでのアニメ製作を経て、漫画に転じた、という意味では、ほぼ同じキャリアを辿った。
ただし、弘前大学全共闘のリーダー格であった安彦と異なり、坂口尚は、東京の下町育ちで高校中退。
安彦良和は、現在のアニメーターたち、例えば庵野秀明などと比較すると、一応「カウンター・カルチャー」的な要素もあり、明治初頭を扱った『王道の狗』などでは、朝鮮の「開化派」を利用した、日本の「アジア主義」や福沢諭吉の双方を批判する視点もある。(続く)