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シモーヌ・ド・ボーヴォワール『第二の性』改訳版

『第二の性』、生島遼一訳を1994年に改訳、さらに加筆修正の上、この3月河出書房新社から出版されました。

訳者あとがきによれば、1988年に「第二の性を原文で読み直す会」に参加した際には、日本でもボーボォワールに対する評価は芳しくなく、その背景の一つに「ポストモダン思想の流行」があったとある。

1988年であれば、おそらく訳者の実感は正しいだろう。

評価が芳しくなかったもう一つの理由は明らかに戦略的なもので「ボーヴォワール」が「男性的主体」を目指す「近代主義」というものだった。

この後者の批判、上野千鶴子さんもいつもしていた。私は上野さんのゼミでこの点を巡って―険悪ではなくー論争したのをよく覚えている。

ところが機を見るに敏な上野さんは、最近すっかりボーヴォワール派になったようだ。これは仏本国のクリステヴァでも同じだが。

フランスでも女性に参政権が与えられたのはWWII以後であり、1949年出版の『第二の性』が影響力をもつのは70年代を待たねばならなかった。

『第二の性』、サルトルの「実存的精神分析」と深い関係があり、現在の英語圏でのクィアーセオリーとも交差する(同じではない)。初読・再読・三読されるに値するテクストです。

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