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V.ユーゴー『レ・ミゼラブル』


 フランスでは大詩人とされるユーゴーですが、日本では詩人としてというよりは、やはり「レ・ミゼラブル」の作者として知られている印象です。

 僕も、複数のフランス映画バージョンを見てきましたが、近年の英語版ミュージカルも、テンポよくつくられていたと思います。


 ただ、別の意味で印象に残ったのは、最後J.=ヴァルジャンの死の場面で、「現世の罪」から洗い流されて昇天する、というメッセージになっていたことです。

 原作では、あるいはフランス版映画では、J.ヴァルジャンは、「罪」を犯したとは見做されておらず、むしろブルボン王政復古と産業革命の進展によって生み出された「悲惨」と「不正」の犠牲者にして抵抗者という位置づけです。

 また、ユーゴーも含めロマン派一般はプロテスタンティズムよりも、「原罪」の観念を限りなく希薄化したカトリックに近く、ードイツ・ロマン派詩人たちもほぼすべてカトリックに回帰したーその点も映画版ミュージカルは、原罪とそこからの救済、というプロテスタンティズムの様式に従っていて、その点、やはりアングロ・サクソン的で興味深かったです。

 

 いずれにせよ、この映画、近年の英語圏の若年層の「左傾化」の感性と共振していることは間違いないと思われます。

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