「文学と映画・・・ユン・ドンジュとエミリー・ディキンソン」
昔からいわゆる「文芸」映画、というものがありますが、文学と映画はまったく別のジャンルなので、いわゆる名作を原作にした映画が成功するとは限りません。
典型的なのは、トルストイの「戦争と平和」。これはアメリカ、ソ連どちらの映画化も失敗だったと言ってよいと思います。
とくにアメリカ映画の場合、かならず登場人物に英語を話させますので、これはちょっと苦しい。第二次大戦時を扱った映画でもSSやドイツ国防軍の将校が英語を話すのはやはり無理があります。
詩人の伝記映画、となるとさらに難易度は上がると思うのですが、エミリー・ディキィンソンとユン・ドンジュの二つの伝記映画は、どちらもよかったと思います。
後者の作品、ほとんどの部分をモノクロで撮っているのですが、これはとくに詩人を主役にする場合、冒険だと思うのですが、全体に抑制の効いた画面になっていたと思います。
あと、当然ながらユン・ドンジュを描く場合、日本の植民地支配の暴力とそれへの抵抗、というきわめて「政治的な」テーマと「ポエジー」のバランスというか、交差(「抵抗」が「ポエジー」になる場合もある)がデリケートな問題になりますが、僕はそこも基本的に成功しているのでは、と感じました。