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 「別離」下

 またファルハーディの映画だけではなく、イラン映画には、ドイツに出稼ぎに行っている人物が頻繁に登場するのも、ここ数十年のイランとドイツの移民労働の関係を背景にしていて、これもおもしろいです。

 総じて、日本では「悪の枢軸」、女性を抑圧する「イスラム共和国」と決めつける米国のつくりあげるイラン像が強いようにも感じますが、実際のイラン(とか言って僕は行ったことはないのですが)の一部だけであれ、見ることができるのは貴重だと思います。

 例えば、イランは女性の大学進学率はとびぬけて高く、それを背景にファルハーディの描く中産階級の女性たちもごく自然に登場するわけです。

 また現在のイランのフェミニズムの活発さにも、こうした背景があります。

 ですから、政権保守派の「反フェミニズム」は早晩挫折せざるを得ないでしょう。

 唯一の不確定要因は、ほとんど根拠のない、欧米のイラン包囲網です。

 これによって国の存立が脅かされれば保守派の「原理主義的」反動が、フェミニズムを抑え込むことはあり得ます。

 現在は、その分岐点にある、と思われます。
 

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