『バッテリー』(あさのあつこ)

素直に面白かった。視野(世界)の狭い主人公が、周囲のひとびとに干渉されて、自身の世界観を変えざるを得ない、否が応でも変化を受け入れざるを得ない。その姿は思春期の困惑そのもので、瑞々しかった。
テクニカルな話だと、立ち上がりがやはり上手い。都会から田舎に移り住むことになってそれでも周囲に無関心な主人公。キラキラと光る自然に目を輝かせる弟。二人の対比。弟の今後を予感させるちょっとした布石。彼らへの関心のバランスのちょっとおかしな両親。そういった要素が一気に流れ込むのだが、抵抗なくスイスイと読める。
また、テンポの管理も巧みで、野球のメジャーさに胡座をかかずに読ませるべきところは厚く、場面転換はサラリと流す。
流石です。
amazon.co.jp/バッテリー-角川文庫-あさの-あつ

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本編とは関係のないところですが、2003年に書かれた「あとがきにかえて」で、1996年に書かれた本作と本作から時間が経過してからのアツい想いが語られていて、そこではサカキバラとか戦争とかあるんですが、本作では(侮蔑的な用法で)「ホモ」と発せられた台詞があって、あさのあつこでもそういうこと書いてたの、「1996年とか2003年とかの世界観やな……」思いました。

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