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「教養としてのエントロピーの法則」(平山令明)

本書は構成に特徴がある。エントロピーのさわり、情報エントロピー、物質のエントロピー、筆者の考える未来論の4章構成となっている。私は物理工学科を出た読者なので、情報エントロピーが物質のエントロピーより先に置かれていることに面白味を感じた。読み進めると納得で、平易で抽象的なコイン/サイコロを使った思考実験(情報エントロピー)から、複雑で具体的な気体/熱の挙動の解説(物質のエントロピー、自由エネルギーなど)へと、平易な抽象から複雑な具体へと発展していく。
エントロピーを数式で表現することを恐れなかった点は見事である。いい意味で学部時代の講義を思い出しながら読めた。また、情報と物理の「乱雑さ」がどのように似ているかを、高々150ページの1冊で例示できたのはむしろ編集の腕が光ったか。総じて「なんかわかった気にさせてくれる」1冊である。
ただ、想定読者が割と謎で、対象は理系高校生~理系学部1年生向けか(文系課程の読者でも読めるようにと書かれているが、正直に言うとかなり困難だと思う)。もう少し専門向けか一般向けかにしても良かった感はある。
また、未来論は特に読むに値しない。
amzn.to/3RLyKa1

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