『火星夜想曲』 #読了
【感想】
土地に結びつけられた共同体がワチャワチャと立ち上がって、膨らんでやがて自ら崩壊していくさまというのはいくら読んでも良いものだ。好きな登場人物は、崩れゆくデソレイション・ロードにおいて、自らのアイデンティティを維持し続けた、博士に次ぐ古株〈犯罪帝国の総帥〉ジェリコ氏。老いてなお一線で戦えることを示すさまがなんとも格好良かった。
また、デソレイション・ロードの歴史をタペストリーに織り込む、いわば歴史の証人とでも呼ぶべき女性が登場するのだが、そのタペストリーと歴史/時間に関するレトリックがキマっていた。歴史改変/時間移動への洞察があった。
とにかく重厚な物語で、読み通すのには体力が要ったものの、それに見合う満足感がありました。