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有吉佐和子『青い壺』

books.bunshun.jp/ud/book/num/9

美術品としての価値はさておき、青磁というのは何故か心を揺さぶるように思う。柔らかく光を纏い、とろけるような風合い、どこか生き物めいた感じもする不思議な焼きもの。

「青い壺」とは、ある陶芸家が生み出した砧青磁の花活けの逸品だが、売られたり譲られたり盗まれたりして、さまざまな人の元を転々とする。物語はその人々の人生模様を描いており、壺自体は物語の傍観者として静かにそこに在るだけなのだが、時折妙に妖しい存在感を放つ。これが色絵の皿とか茶碗とかだったらきっとこうはならない。家庭の中で実用品として使われる花活けだからこそ風景に溶け込み、存在感を自在に出し入れできるのだろう。

巡り巡って最後には作り主の元に戻ってくるのだが、皮肉な結末に、やはりこの焼きものの魔性を感じる。

Eテレの「100分de名著」で、『恍惚の人』を「愚痴文学」と評していたが、この作品も愚痴が多い。そして愚痴なのに、掛け合いのリズム感なのか言葉選びのせいなのか、やたら面白い。老婆の団体旅行を描いた第九話が特徴的で、登場人物の言動はまどろっこしくてイライラするのに、文章自体は面白くてするする読めるという不思議な読書体験をした。

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