小島瓔禮『猫の王 猫伝承とその源流』
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猫様の下僕(猫飼い)としては、猫がひどい目に遭う話が多くてしばしば胸苦しさを覚えていたが、それはともかく。
猫は長く人に飼われてきた動物ながら、他の家畜のように(名目上は鼠取りの役割を与えられるが)人に使役されるわけでもなく、ミステリアスな部分が多いことから「魔物」のイメージが強い。それらは昔からある蛇や狐、狼など他の動物や、鬼、妖怪の伝承と習合してきた節もあるが、しばしば人に害を為すものとして民話や伝承に登場する。その伝承には世界に共通するいくつかの型があり、時代や文化に応じて形を変えながら伝播した形跡があるという。
多くが「ばけもの」としての猫の話だが、招き猫で有名な豪徳寺の由緒譚など、人里の中では猫は人に恩を尽くすのに、農村など野生と距離が近い地域では恩など知らないとでも言わんばかりに、人に対して非道なように感じられるのは面白い。
個人的に、中国の少数民族には猫(虎)を先祖の姿と見て非常に大事にする人々がおり、死後は猫に生まれ変わることを願うという微笑ましい話が好き。