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シャーリイ・ジャクスン『ずっとお城で暮らしてる』

tsogen.co.jp/np/isbn/978448858

読み始めて、民俗学でいう「憑きもの筋」の話だと思った。急に豊かになった者や他所から来た富裕者を、不正な手段(家につく妖狐)を使って他者から富を掠め取った卑怯者だと考え村八分にしたというもの。そこにあるのは富に対する嫉妬や羨望から生じた歪んだ悪意で、「憑きもの筋」とされた人たちより、そう呼ぶ人々のほうが何かに「憑かれ」ているようだ。

村内で孤立している姉妹とその伯父は、それ以外の家族が毒殺された大きな邸宅に住み続け、それなりに秩序を保って平穏に暮らしていた。しかし従兄の「侵入」により秩序は崩壊し、やがてカタストロフに向かう。クライマックスの悪意の暴走は、人間の描き方としてかなり醜悪だと思った。

語り手である主人公は年齢の割に行動も思考も幼稚だが、単に「独特なパーソナリティ(そういえば、こういうタイプが「狐憑き」と呼ばれることもある)」というだけではないことが明らかになってくる。

『恐怖小説』と銘打たれているが、自分はディスコミニュケーションの悲哀や、「ないもの」とされがちな存在への憐憫を強く感じた。

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