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遠山美都男『壬申の乱 天皇誕生の神話と史実』

chuko.co.jp/shinsho/1996/03/10

副題にあるように、結論としては壬申の乱からの天武天皇即位を、それまではあくまで他の豪族より抜きん出た一族の「大王」であったものを、他の豪族(婚姻や子女の養い親として関係を結び協力体制を作った)も含めて「国を統べる王=天皇(すめらみこと)」という新たな地位に替え、天皇を「神の加護を受けた穢れなき存在」として臣・民の上位に置くシステムの基礎を作った転換点と見ている。クニの集まりであった日本が、一つの「国家」になったということだ。

面白いと思ったのは、大友側には天智天皇の時代に作られた戸籍制度(庚午年籍)による徴兵制度を試す意図があったのでは? という点。民衆の支配体制の転換点でもあったらしい。記録に残らない部分で知りようもないが、民の生活にはこのシフトがどう影響したのか気になる。

日本書紀の記述は真実か? という疑問に発しているので、乱の経過を丁寧に追って推理していく流れはミステリーじみて面白かった。ただ、乱の主戦場となったのが不破関(現・関ヶ原)であったため徳川・豊臣の争いになぞらえる描写が多かったが、やや牽強付会の感がある。

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