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佐々涼子『エンジェルフライト』

shueisha.co.jp/books/items/con

表紙(ドラマの特装版ではない)を見て『ライトスタッフ』を連想した。取材対象である国際霊柩送還会社の人たちは、実際「仕事に選ばれた」のだと思う。

タイトルの「フライト」は貨物のfreightだが、天使が空を飛んで運ぶ、という優しいイメージが湧く。しかし、昼も夜もなく、全方位に繊細な目配り・気配りが必要で、扱うご遺体も綺麗な状態でないことが多いという相当過酷な現場だそうだ。

心身が削られる仕事であるが、自分たちのことは「忘れてもらったほうがいい」と送還士は言う。遺族が大切な人の死を乗り越えて先に進んでいるということだから、と。悪い意味ではないのだが、彼岸と此岸を繋ぎ、境界を超える困難を助けてくれる、かれらは冥界の川の渡し守のようにも思える。

映画『おくりびと』以降、ご遺体を扱う仕事への忌避感は多少薄れたかもしれないが、「忘れられるほうが良い」という言葉は、こうした仕事が「透明化」されがちなことも表しているように思う。それを見えるようにしてくれた著者の真摯で丁寧な仕事にも敬意を表したい。

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