伴名練『なめらかな世界と、その敵』
自分とはなんなのか、そして他者と理解し合うとはどういうことかという自他の関係性、解説の言葉を借りれば「隔たり」の話であり、その隔たりをいかにして超え、分かりあうかの話であった。
電脳化された冷戦(『シンギュラリティ・ソヴィエト』)とか、パラレルワールドが同時進行し自由に行き来できる(『なめらかな世界と、その敵』)とか、どれもダイナミックな設定で面白いが、東海道新幹線の路線上で「空白化」されがちな某県の住民としては、『ひかりより速く、ゆるやかに』が特に印象に残った。少年少女×タイムパラドクスはやはり定石。
著者は子供の頃から古今東西のSFを読みまくってきたようで(というかかなりのSFフリークらしく、あとがきがほぼ日本のSF史)、硬派な設定でも読みやすいのは、主軸の物語がナイーブで感情移入しやすいことに加えて、その知識や表現の厚さによるのだろう。