一穂ミチ『スモールワールズ』
わりとありふれた設定や関係性の話かと思いきや、途中にめちゃくちゃ急なカーブがあって先の予測がつかないし、たどり着いた先がわりととんでもない場所で呆然とした。登場人物のキャラクターも文章自体もどっちかというとクールでドライだけど、時々マグマが顔を出したみたいなセリフや描写が出てきてひえっとなる。爽快な読後感ではないが、後に残る苦さに旨味がある。
物語は部屋、水槽、教室、バスなど、閉じられた空間で展開し、あまり外に出て行かない。しかし社会的には「普通」という箱に収まらない人々の物語なので、人目にはつかないけれどその世界はそれぞれに凄絶で、読後は確かに「小さな」「世界たち」というタイトルであるべきだと腹落ちする短編集であった。