六車由実『新装版 神、人を喰う 人身御供の民俗学』
ヒトを神に捧げる(生きたまま殺す)という宗教的行為があったかといえば、人柱や殉葬は物的証拠があるが、神の食べ物としてヒトを生贄にした「人身御供」には、確たる証拠はないそうだ。
それにしては生々しい伝説があったり、人を虐待する血腥い神事が残っていたりするのは何故かという考察。時代や価値観(特に稲作と仏教の影響)に応じて生贄の意味合いや形式が変化していくというのは面白かった。
ただ「日本は文明国で人を生贄にするような野蛮な風習などない」という民俗学界のスタンスに対する反論がきっちり潰されているようには思えず、海外の類似事例との比較も少ないので、ちょっと釈然としないところはある。