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菅浩江『永遠の森』『不見の月』『歓喜の歌』

博物館惑星シリーズを再読含めて一気読み(第1作が20年前とかハハハご冗談を)。絵に描いたような大団円で、最終章の多幸感に久々に小説で泣いた。

パラダイスの語源は「壁に囲われた」という意味の言葉だと小耳に挟んでから、隔離空間でないと美しいものは保てないのかもと漠然と思っていた。この「博物館」はそんな歪さをはらんでいる。

そこにやってくるのは恵まれた人ばかりでもないが、美を楽しめるのは基本的に裕福な人々であるのも歪である。脳にAIを接続された学芸員(博物館のために機械化された人間)が博物館を支えているというのも歪である。

そもそも、小惑星を丸ごと地球の引力圏に「引っ張ってくる」という強引さが象徴的だ。「美」は傲慢なものという前提で、それでもやはり心を揺さぶり人をつなぐものとして求められるし、物語世界のAIたちは、美しいものを見る人の心から情動を学ぶ。だからこそ、傲慢で歪であっても、美しいものが愛され大事にされ続けて欲しいとつくづく思う(昨今の博物館・美術館の苦境を見聞きしていると、ポジティブな未来を思い描けないのがつらい)。

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