武井彩佳『歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで』
ちょうど読み始めた頃に関東大震災の虐殺事件が話題になっていて、政治家が堂々と嘘をつくことにも、ここぞとばかりにヘイトスピーチをする人の多さにもうんざりしていたところ。
ホロコーストのように、体験者の証言や物的証拠がある事件すら否定しようという思考回路がいまいち理解できずにいたが、本書を読んだら、ホロコースト否定論が出始めたのは戦後20年ほど経って「まだ自分たちは罪を償わなければならないのか」という意識が芽生え始めた頃だとあって納得した。日本でも安保闘争などの社会主義運動は似たような経緯で生じているように思える。
ということは、今現在、荒唐無稽な陰謀論が流行っているのは「我慢することに耐えられなくなった人が増えた」からかもしれない。
ある考えの正しさを信じ続けるために、都合の悪いものを無視し、被害者や傷ついた人を軽視し、事実を捻じ曲げたら陰謀論になってしまうという。イデオロギーにとらわれるとそっちに転ぶのは容易だろうから気をつけねばなと自戒。