『ケイコ 目を澄ませて』をアマプラで観たのですが、16mmフィルムを通されて映し出す東京の下町(繁華街・路地裏・河川敷)と、ろう者の主人公が聴こえるはずのない、環境音だけが響く世界、という画面構成と、感情の露発の少ない主人公が、プロボクサーになったことを機として、自分の拠り所となっていたボクシングジム(もとい会長)がなくなってしまう出来事を通して、自身の内部に溜める悲しさや怒り、そして「すべてを投げだしてしまいたい」という葛藤が犇めく感情の激動を台詞無しの演技だけで表現しようという潔さ、「怒りがなければ試合はできない」という会長の言葉を受けても奮闘できなかった主人公が、会長が倒れたことを機に再起する表情の描写、途轍もなく良くて、本気で劇場で観なかったことを後悔しています……… 同監督がやっている『夜明けのすべて』もちゃんと観たいな。