悪魔の眼(ライバボ)
「ライとバーボンは犬猿の仲」
組織には誰もが知っている不文律がいくつかある。ジンに反抗すると殺される。とか、幹部は全員特殊能力持ちだ。とかそういうものが。 ライとバーボンの仲の悪さもまた。
だからよくバーボンの元にはライの醜聞が、ライの元にはバーボンのそれが集まるのだ。曰く、男なら見境なく脚を開く淫乱だとか、警察に情報を流して褒美を貰っている裏切り者だとか。
「僕はこんな話を聞きましたよ。ライは悪魔信仰をしていて、その長い髪は生け贄の頸を締めるのに使うんだとか」
真剣な顔をして、濡れた黒髪に触れたバーボンは反対の手で自分の頸を触る。
「それを聞いてなんと答えたんだ?」
ええと、何て言ったんだっけな。随分と間の抜けた声の後、「僕はあの男が縦に裂けた蛇の眼をしているのを見たことがあります。もしかしたらあの男自身が悪魔なのでは?って言いました」と、かわいい顔でニコリと笑う。
「ホォー。悪魔の目をしているか、俺は」
「拗ねないの。…でも僕を見るあなたの眼、たまに恐ろしく感じることがある。このまま捕って喰われるんじゃないかって」
バーボンはライの髪から手を離して、両手をライに向けて広げる。
「恐ろしいけど、何度も見たくなる」
ライは伸ばされた彼の手を取る。濡れたままの髪がまた彼の腕に当たった。