展開や使われている音楽に触れます
最初に流れるHere Comes the Sunの時点で掴まれた。マシュー・ハイネマンの「ニューヨーク 第1波」で回復のサインとして病院で使われていた音楽。もう大丈夫、の喜びの歌。JOY。
往年のヒット曲使いは時代を表すだけではなく。人工授精シーンでの一連の流れにはヴォーン・ウィリアムズの揚げひばりが流れ、ここで終わり、と決めたように終わったあとのエンディングにはPPMの500 Milesにのせて「彼女のこと」が語られる。冒頭の言葉が最後では実感の度合いが変わって聞こえてくる、というのは珍しくない話だけど、これだけ丁寧に積み上げてあればまあ、ぐっとくるさな…
結構センシティブなテーマなんだけど、人工授精への反発の強さと一体になっていたのが(すでに合法化されてはいたが)妊娠中絶への強い反発と同種のものだった実態を語ることで「女性の選択肢の話」に位置づけたのもクレバーだと思ったし、希望の残酷さも見せている。廊下の暗さ。痛みに対する誠実さ。
何より語り方がいい。寄り添う人であり続け、しかし本人自身は悩みに悩んでいた一人のナースと卵子クラブの女性たちがはしゃぐ海辺の波は厳しく風は強く、それでも彼女たちは本当に楽しそうに笑っていた、それがすべてだと思わせてくれた