哀れなるものたちの話。ちょっと内容に触れますね
最初のエネルギーこそ性的興奮一辺倒だけど、ただただ元気に超高速で進化する、何もかもが異質なベラの冒険はたしかに楽しい。「偽物の本物らしさ」を強調するセットデザインも強烈だけど、主にエマ・ストーンの身体運動と音楽の激烈さによって異質が「普通」をバリバリ踏みしだく。
そのさまは最高に面白いし、スーパーフィメール映画としてのある種の痛快があるのは認めつつ、やっぱ端々で意地の悪さというか「痛快だと思わせておく」たちのわるいしかけが入ってるような……特に終盤。
まあこれは私はランティモスをシステムからの離脱の不可能性の人と認識してるからで、もしかしたらもっとシンプルな捉え方でいいのかもしれないけれど(鹿殺しまではこの「その世界におけるシステム」が謎なので異様な話に見えやすいけど、女王陛下や今作では規範が現実とリンクしているので規範破りに快楽があるわけね、でも結局同じ話なんじゃね…?)とか考えちゃった。
後半では少し過剰な作り込みに飽きたこともあり、パリのセグメントからはもうちょい切ってもよかった気がする。そのぶんポルトガル謎ダンスを!もっと!見せて!(謎ダンスが好きすぎた)(でもあの程度に収めるのが趣味の良い悪食の範囲、ではあるよね)