『秋立ちぬ』を見ていました。こども主人公であろうが容赦なく階級の話であり、女性の複雑にならざるをえなさの話であり、わかりあえても優しそうでも他者は他者であるという話であり、立場が弱ければ弱いほど無神経さにぐちゃぐちゃにされるのだが、それでも人はひとりでも生きていける、諦めてぼやきながら失い続けようとも弱きものは簡単には死なねえよというハードボイルドな成瀬映画なのだった。変わりゆく東京の話でもある(このあたりからグッと都市開発が加速するギリ手前、ダッコちゃん人形の頃)。グローブを捨てないで持って帰って蹴るにとどまる一連がよいね。もったいないもんね
ただ、やはりわけありの女たちの話に比べると一段下がる印象。毎度の男のひどさだめさのパターンのバリエーション豊かさとその解像度の高さには感心するも、やはりこどもさんだと男女のグダグダグジグジのよさ、感情と行動の噛み合わなさ、逡巡の繰り返し的な奥行きはちょっと弱いし、かといって「おかあさん」的な優しさのほうには寄らないのでちょっとどっちつかずというか。やはり言語化できない年代の子たちなのでクドクドしたあのぼやきがなくなってしまうとちょっと寂しい。全体にやや台詞台詞しすぎているから喋らないとこのほうがよいという判断か、海辺のシーンとかにちょっとサイレント志向もある。