「未来散歩練習」パク・ソルメ 著 斎藤真理子 訳 

釜山アメリカ文化院放火事件をモチーフに二つのパートで進行する今作。よく歩きよく食べ、日々の営みの描き方は驚くほど自然。今作を読むことも未来への練習なのだろう。読み終えまた最初に戻るのだった。

放火事件から受けた問いを関係者の声明文やボブ・ディランの詩から思考し、表題に繋がるある答えは未来に繋ぐ希望のバトンとして渡される。目で追うその文章に光が当たっているようだった。

「現在と未来について考える人たち きたるべきものについて絶えず考え、現在にあってそれを飽きずに探し求める人々は、すでに未来を生きていると思った。」

「絶えず時間を注視し、来たるべきものに没頭し、人々の顔から何かを読み取ろうとする人々は、来たるべきと信じるそのことを、練習を通してもう生きているのだと。」

「地平線の叙事詩」アレクシス・ライト 著 有満保江 ・李ヤオ訳   

大地と精霊と暮らすアボリジナルな人々に対し入植した英国人による圧政の歴史を散文詩として描く。地平と時間を軸に先住民が持つ世界観を神秘的に寓話化、近年の紛争や難民とも重なる問いがある。
著者の英語で書いた今短編を日本語、英語、中国語訳にし並列させたものでオーストラリア現代文学傑作選の第8巻にあたる一冊。

「九月と七月の姉妹」デイジー・ジョンソン 著  市田泉 訳  

あまりにも"生きて"いたため周りの人間から生命を盗んでいたと表される姉。支配を受け入れる妹と相反するその身体性がとてもリアル。ホラーめいた雰囲気と霧を纏うような謎に引き込まれ一気に読んでしまった。七月を想う。

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