その道ウン十年の人形師の先生曰く、「人形作りの極意は胡粉練りにあり。胡粉を満足に練られるまでに数十年はかかり、それでもなお道を極めたとは言えない。胡粉練りにマニュアルは無く、日々の気温・湿度によって膠水の濃度を変え、丹念に時間をかけて練っていかなければならない。」
…そんなめんどくさいものを使っていられないと思ったので、今まで張り子の下地には胡粉ジェッソというものを塗ってきた。これならビンの蓋を開けて塗りたくるだけでコツも極意もいらない。あゝ文明の利器は有り難きかな。しかし、今回はちょっと血迷って、失敗上等で本物の胡粉と膠を買ってしまった。で、今日塗ってみたのだが、塗ったそばからバキバキにひび割れて、半泣きになりながら割れた胡粉をひっぺがして、うなだれながら胡粉ジェッソをAmazonで注文するハメに…という結果を覚悟しながら塗ってみたのだが、思いのほか仕上がりが良く、正直胡粉ジェッソを使うより遥かに良い出来に感じられて嬉しい驚きを感じている。よく言われるひび割れも今のところ出ていない。何だよ、人形作りの極意とやらも大した事ないなあハッハッハー!
…すみません、少しいい気になってます。まあ、秘孔を突かれた人みたいに数日後に突然バキバキひび割れることもあるようなので、それまでは震えて待ちたいと思っている。