恒川光太郎『竜が最後に帰る場所』

短篇集。何はともあれ「夜行の冬」がすんごい。一言でいうとパラレルワールドになるのだけど、世界観が独特。錫杖もった赤い服のガイドさんに連れられて夜な夜な「お隣」へ移動って。想像を掻き立てられるオチも含めて、秀逸すぎる短篇でした。収録作では他に「鸚鵡幻想曲」が好き。前半と後半で全然ちがう展開になっていくけど。

藤野可織『爪と目』

表題作は芥川賞受賞作。死んだ母の代わりに父は元浮気相手の「あなた」と再婚する。「見えるもの」「見たいもの」「見られたいもの」様々な目線と、それらをひっかくように傷つけていく出来事。二人称なのか、一人称なのか。回想なのか、現在進行系なのか。不可思議な文体で書き進められた、不気味なブンガク。

光媒の花 / 道尾秀介

遠景どうしがうっすらと繋がり合う犯罪の連鎖をそれぞれの視点で描いた連作短編集。ひとつひとつのストーリーが独立して楽しめつつ、前の話とどこが繋がるのかと探しながら読むのも面白かった。
#読書

地獄のハイウェイ / ロジャー・ゼラズニイ

絶版本。核戦争によって崩壊した未来。カリフォルニアのならず者ヘル・タナーは、これまでの全犯罪の赦免と引き換えに、ペストで苦しむボストンまで武装車で血清を届ける仕事を請け負う。襲いくるモンスター、天変地異、ギャングたち。迎え撃つ火炎放射、ミサイル、手榴弾。男のロマンあふれる世界観で疾走するSF西部劇。もともと中編だったものにいくつかエピソードを足しているらしく、唐突すぎたり蛇足だったりする箇所が気になった。

比嘉姉妹シリーズ。眠るたびに悪夢にうなされ、正体不明の怪異に襲われる「僕」と友人たち……というホラー・サスペンスな入りから始まって、ぐるんぐるん世界が入れ替わって、構成も二転三転四転五転して、いま現実を読んでいるのか夢を読んでいるのか分からなくなってくる。読み終わった今も、まだこのお話は終わっていないんじゃないか、と思ってしまっている。冒頭のショッキングすぎるスプラッタで一度本を閉じてしまったけれど、そのあとは一気読み。楽しかったー。

ピエタとトランジ / 藤野可織

関わった人間がみんな殺されるか殺すかしてしまう「殺人誘発体質」のトランジ。彼女のもっとも近くにいながら、殺される側にも殺す側にもまわらないピエタ。二人に巻き込まれ、世界は静かに終わっていく。とんでもなく沢山の人が死ぬけれど、どこか美しく爽やかで不思議なサスペンス。

キミオアライブ / 江口公生

幼少期の壮絶な闘病生活を乗り越えた少年キミオが「やりたいことを全部やる」べく、ノートに膨大な夢を書き綴り、YouTuberとして実現し、自分だけでなく周りも幸せにしていく。作者急逝によって未完に終わったが、心揺り動かされる大傑作だった。やりたいことは全部やっていいんだ。全部やろう。

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