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病弱な養父と養子 

小さな手がそろそろと額や頬に触れ、ゆっくり離れていった。気怠さに重く落ちていた目蓋をスキピオがどうにか持ち上げたとき、その子はそばを離れようとしたところだった。目が合って、しまったという顔をして、けれど逃げずに一歩寝台へ近付く。
部屋は明るかった。うんざりするような暑さなのだろうが悪寒ばかりが明確で、努めて穏やかな表情を浮かべようとしても子供にそれが伝わらない程には顔色も悪いらしい。
「大丈夫……」
囁く小ささの声に子供は頷き、微笑んだ。こういう時の気休めはかえって不吉に響くのを経験から知っていたが言わずにいられなかった。その子の目に浮かぶ不安を拭ってやる方法がなにも思いつかなかったのだ。
まだ死なないで、まだ、自分の番にしないで……そう言い募りたいのを堪えて心から養父を案じる、優しい子だ。まだ、この子には自分が必要だった。この家に確かな居場所を得ておらず、ここにいてもよいのだと信じきれていない子供には、その存在を望んでやまない誰かがいてやらなくてはならなかった。自分が負いきれなかった名を継ぐ子供にしてやれることを見つけて、スキピオは確かに幸せだった。だから、この子にもそれを信じてほしい。
「大丈夫だよ」
ずっと昔、自分にそう言い続けた父の願いを、ようやっと受け取れたという気がしていた。

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