『オはオオタカのオ』ヘレン・マクドナルド著/山川純子訳(白水社)
去年の10月に熊本の橙書店に行った時に、気になってたんだけど別の本を買って、あれからずっと忘れられなかったんだが、今年また同じタイミングで同じお店に行ったら私を待っててくれたので買った。
幼い頃からタカ(この場合、ハヤブサも含む大きい括りのタカ)のことばかり考えて、タカにまつわる本はなんでも読んでいた著者。父の死という絶望のそばに、一羽のオオタカがやってくる。オオタカは、チョウゲンボウやハヤブサよりも気難しい鳥で、著者は鷹匠としてメイベルを飛ばす(つまり狩りをする)ために、トレーニングをしていく自分を、過去に同じようにオオタカと暮らしていたホワイトの手記に重ね合わせていく。ホワイトの手記は、タカにたいする虐待でしかないのだけれど、ホワイトがタカを通して向き合っていたものは、絶望であり、社会からの抑圧であり、コントロールできない己の激情でもあって、「わたしはそうではない」と何度も言い聞かせながらホワイトに寄り添い、タカと同化して塞ぎ込んだり、攻撃的になったり。
わたしはペットとして鳥を飼うことに憧れはあってもそこまで積極的にはなれなくて、色々考え込むことが多いんだけど(手元にいて認識されることよりも、されないこと/距離があることに→

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魅力や意味を感じるので…)でも、野生の炎を燃やし続けている存在をこのように理解しようとして、でも「理解されない」し、「理解される」のか、というのがすごくよかった。
著者はメイベルに対して、自分のタカだと言う自信もあるけれど、悲しみに寄り添ってくれる存在としての依存もあるし、そして、最終的には鳥と人間という異種間での共同生活だから、メイベルが飛び立ってしまうと凄まじい不安に襲われてしまう。逃げようと思えばタカは逃げてしまえるし、なんか気に入らないなあと思ったら長いこと帰ってこなかったりとか…。ペットらしい「甘え」よりも、狩りができるという強さを持っているが故に、選択肢がタカ側にもかなり豊富に用意されている、と言うところに、共同生活の危うさがあるのがとても良かった。
タカのふくふくした描写や、人間がとにかくわずらわしいとか、自然の描写とか、外国の話なのに手に取るように感じられた。
この著者のハヤブサについての本もあるようなので、こっちもまた読んでみようと思う。

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