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『シーリと氷の海の海賊たち』フリーダ・ニルソン作/よこのなな訳 読み終えた。
海賊に攫われた妹ミーキを取り戻すため、シーリは海賊を追う旅に出る。
かなり分量のある物語なんだけど、シーリのおしゃべりを聞いているような語り口で読みやすく、夢中になって読んだ!
荒れた氷の海を恐れないような海の男たちですらおそれるシロガシラを追うシーリは、旅の途中でオオカミを狩るひとや、鳥を使って魚を得ようとする少年などに出会う。動物たちはこき使われていて、シーリはそれっておかしいよ…って思うけど、動物たちをこき使「わねばならない」人たちは構造によってそうさせられてもいて。このあたりのことがとても心に残っていくのがよかった。
そして「いやなひと」が「いやなひと」のままでいることとか。誰もが善良でありたいが、よいひとで「あれない」構造もあり、たとえばハトは自由のために心を売ったという自覚があって、そんな自分は海賊をしていくしかない…とも思っている。それによりそう人もいる。
シーリがしたのはシーリ自身の冒険で、それがたとえば世界を善良に変えてしまわない。物語は静かに「物語」の定型から距離を取り、現実へ視線を向けるのをそっと、背中を押してくれるような。

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