孤伏澤つたゐ『ゆけ、この広い広い大通りを』(日々詩編集室、2023)読了。

物語話者は2人の子どものいる専業主婦「まり」。その子ども達の動きが伸びやかで、トランスジェンダー女性である「夢留」や、アロマンティック/アセクシュアルなフェミニストである「清香」と橋渡しする鍵となっている。

親世代との確執がリアル。所謂「毒親」でなくとも、子どもが大人になっても過干渉だったり、話を周囲に筒抜けにしてしまったり……。

「まり」の夫である地方公務員の「環」の人物像も良かった。男性中心社会で育休を一ヶ月取った「環」は、花形の部署から、女性が多く彼が休みにくい部署に「理解があるから」と転属されて、残業の日々となる。そこで疲弊する彼は、「家事・育児を妻に丸投げする男性」として責められるべきなのか。本書では問題を個人化せず、構造のものとして描いている。

3人が頼り合っているのがとてもいい。私はケア論の「修繕的正義」という概念が好きなのだが、まさにこの3人は、踏み越えて傷つけてしまうかもと恐れつつ、繕い合って生きている。生きている限り、擦り切れて傷ついてしまうのだが、個人の力だけで閉じてしまわず、緩やかに繕い合えるなら乗り切っていけるかもしれない……。

「地元」で生きる人にも、東京の人にもオススメの本です。

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一実さんこんにちは。
本を読んでくださってありがとうございます。
親がすぐ近くに(一緒に)生活しているしんどさ・男性を労働力として搾取する過程で女性がさらに搾取されている、ということをちゃんと描きたいなと思っていたので、そこを読み取ってもらえたことがすごくうれしいです。
本を作って、誰かに読んでもらえるまで、すごくどきどきしていて、でもこうして読んでいただいてコメントをいただけたことで、物語が一つ完成したんだ!と実感しています。ありがとうございます…!

とても豊かな読書体験でした。こちらこそ、ありがとうございました!

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