“日本は併合の直後から朝鮮の村祭りを禁止した。また、村祭りにともなう綱引き、石戦、車戦、木牛戦などの民俗戯も、それに仮面劇の上演も禁止した。金淑子さんの体験を一例にして示したように、朝鮮民俗芸能の中心的保持者であるムーダンたちのことも抑圧し、各地を放浪するとくに一般民衆との交流のつよい下級パンソリ演唱者たちに阿片をのませ、芸ができないようにした。さらに村祭りと共に民俗芸能の空間でもある市場も弾圧した。一時は、民謡の「アリラン」でさえも、その歌唱を禁止した。そしてこうした直接的禁圧の一方で、初等学校をはじめとする教育機関、警察、行政機関、ジャーナリズムを総動員して、朝鮮の民俗文化、民俗芸術を、迷信的であり、劣等な後進的なものだとする植民地史観、文化観を朝鮮人にたいして植えつけていった。すなわち、日本の植民地支配は、外部と内部の両方から朝鮮の民俗文化、民俗芸術を解体し、歪曲し、断種しようとしたのである。”

どこかで見た名前だなと思っていたら、編集者として伝説的に有名な久保覚なのか。60-70年代の(ポスト)戦後思想史の潮流で、現代思潮社〜せりか書房の話題が触れられるときには、久保はキーパーソンとしてしばしば語られる。

ja.wikipedia.org/wiki/久保覚

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中上論としては、亀有碧「中上健次の〈アジア〉思想」(2023)が久保の議論を引き継ぐものと言えそうだった。
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