三可子・貴美江「江藤新平と芸者お鯉」
マクラで、この噺は評価が分かれると話していて、その理由もわかったけれど、わたしは好き。維新の立役者の一人として数々の功績をあげつつも、のちに佐賀の乱を起こして斬首された江藤新平。そのさらし首の写真を毎日のように買い占める芸者お鯉、という不思議な始まり。かつてのかすかな縁を恩に感じ、江藤の斬首の写真を出回らせまいと義理を通す一介の芸者が、あるとき政府の大官らの新年会に呼ばれ、そこで斬首刑の首謀者たちを相手に一歩も退かずに理非を説く。静かな痛快さ。
はる乃・貴美江「文七元結」
30分という時間の制約もあるだろうが、落語に比べるとすべてがあっさりとコンパクトに進む。文七に五十両くれてやるときも、落語のように逡巡せずに、もってけ泥棒とばかりにポイっと渡してしまう。落語版ふうを期待すると物足りないところだが、見栄っ張りで粗忽な江戸っ子の強がりが顔をのぞかせたようでもあり、これはこれでいい気がした。
何より、はる乃さんのぴーんとどこまでも伸びていく力強くて美しい声をたっぷり浴びられてよかった。節回しも啖呵ももう堂々たるもので、28歳の最年少浪曲師とは思えない(でも芸歴10年だからね)。