これまでずっと、凄いと思う浪曲師は女流ばかりだったのだけれど、この方と弟子の幸太さんはいきなりわたしのなかで男流の筆頭に躍り出た。少しハスキーな声(ダミ系じゃない)、細やかな節回し。これまで聞いた関東の浪曲は、節の部分も語りの延長に節がついたというか、「何が何して何と~やら~」みたいに一度声を張ってpause。また一節続けてpause。という印象だったのだけれど、幸枝若さんのは違う。まるでヤーレンソーランソーランじゃないけど民謡みたいに、軽快な一定のリズムのもとにぐんぐん引っ張っていく。手拍子したくなるような心地よさ。そして節も啖呵もそれぞれが長い。関西vs関東の違いなのか、この人独特のものなのかはわからない。弟子の幸太さんもとてもお上手だった。啖呵の部分はこてこての関西弁で、「何してけつかる」てなもんで(^^)こっちも軽快。
たまたま演目がそうだったからかもしれないが、切々と心情を歌い上げるというよりは、軽快なリズムに乗せて物語を巧みに聴かせていくという感じ。噺自体も面白かった。安珍・清姫って、名前を聞いたことはあったけど、ああいう話だったのか(でもWikiに載っているあらすじとはちょっと違ったけど)。
曲師さんにも色々違いを感じた。まず三味線の音がぜんぜん違う。低い感じ。掛け声の入れ方も掛け声自体も違うし、つねに背後で何か弾いていて、音が止まっている時間がすごく少ない。場内はほぼ満席で熱気いっぱい。20:30終演予定と書いてあったのに19:50で「ちょうど時間となりました~」となったのはご愛敬(新幹線の時間かな?^^)。ともあれ、フォロイーさんが絶賛するだけのことはあるなと堪能した。