まもなく開催1周年になる『積読へらさないと』の特別編に参加しました(北海道新聞本社2階旧DRIVEにて)。土日も玄関で搬出作業が続いていたし、館内に入れるのは本当にこれで最後になるようだ。元スタッフが集まると営業中の雰囲気が戻ってくるようで、数年間でも場所の記憶は貴重ですね。
今日取り上げたのは『文にあたる』(牟田都子/亜紀書房)でした。著者は作家や編集者から指名を受ける人気の校正者で、同じ校正といっても、文芸誌の出版校正と新聞社の校閲、商業印刷校正でそれぞれ正解が違うというエピソードが面白かった。ニューヨークの観光船に乗っていて見えてくる風景の順番は新聞校閲では事実通りが正解だが、著者の頭の中で反復された記憶は、事実と違っていても本人にとっては真実だ(福岡伸一『生物と無生物のあいだ』)という指摘は感動的だ。
文芸誌は誤植があってもお詫びで済む、自分たちは刷り直しになるからお詫びでは済まないといったことを商業印刷校正のベテランから言われたこともあるという。チラシやカタログは処分されるが、本は何十年も残る、そこに誤植を残したくないという思いで取り組んでいると続くのだけど、分野毎のせめぎ合いが伝わってくるようでした。