『ノルウェイの森』(村上春樹/講談社文庫)を今ごろ読んでいるが、主人公が突撃隊の吃音を揶揄したり、緑のタバコの銘柄や吸い方を女らしくないと言い出すのが乱暴に見えてしまう。遅くとも90年代に読んでおきたかったが、感受性の問題だけではなかった。

『ノルウェイの森』は文字通りビートルズも出てくるが、ビル・エヴァンスのレコードも登場するんだな。団塊世代の追体験という意味では『三丁目の夕日』の地続きのようだ。

偶然気がついたが、この前読んだ『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ)は曲名がタイトルかつ重要なモチーフで、親しい友人や恋人の喪失を描く点は『ノルウェイの森』に良く似ている。

村上春樹の『ノルウェイの森』にFMラジオからクリームのWhite Roomが聴こえてくる場面があった。村上龍の『69』(集英社文庫)ではコピーバンドをやっていたが、同じ団塊世代の文学でも聴いているのと自ら演奏する違いが両者の違いのようで面白い。

村上春樹作品の登場人物は普通悩む必要のないようなことでくよくよ悩んでどういうわけか死んでいく、などといった論評を10〜20代で鵜呑みにしてしまい、残念ながらほとんど読んで来なかった。
くよくよできる感受性の豊かな間にもう少し読んでおいてもよかった。

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』にはタイタニックの乗客の家族が登場して、カムパネルラの消息も後で判明するが、生死の境界にいるような人物が次々に登場して去っていくのは『ノルウェイの森』もよく似ている。

村上春樹作品は周囲に愛好者が多かったのも敬遠した原因だった。やれやれの頻出やスワローズファンといったことだけは断片的に知っていた。

『ノルウェイの森』は下巻の途中までは男性に都合の良い三角関係という印象だったが、直子の病状が悪化して緑と仲直りするあたりから都合の良さの行く末が行間に満ちてきて納得した。

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『ノルウェイの森』(村上春樹/講談社文庫)を今ごろ読み終えた。大学生の課題図書をようやく片づけたような気分だった。

『ノルウェイの森』は後半でバイト仲間の伊東という人物が登場するが、フランス文学が好きな長崎出身の美大生というのが村上龍のようで面白い。

『ノルウェイの森』の後半はこの物語からどんなことを読み取るのか、レイコさんが説明しすぎている印象もある。本編の中なのに解説のようにも感じる。

『ノルウェイの森』にはお金がなくなると肉体労働を数日やって稼いだという場面が出てくるが、この辺の感覚は当時の団塊世代の立派なところだ。坂本龍一のエッセイにも似たような記述があったな。

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